都筑区放課後等デイサービスFORTUNA   欧州日記#5

 

こんにちは、都筑区の放課後等デイサービスFORTUNAです。

 

夏休みは予想外に子どもたちが来てくれて、ちょっとバタバタしていたものでスロバキアでの事件の続報を書く時間がありませんでした。

 

それでは続きです。前回までの話と重複するところがあるかもしれませんがご了承ください。

 

さて、ブラティスラバという街のバスターミナルに、午前0時、マイナス20度という環境の中一人取り残された私でしたが、どうしようもないので待つことに。

 

しかし、当時のスロバキアはチェコと分離したために非常に貧しい国でした。(簡単に言えばチェコは工業国、スロバキアは農業国として歩み始めていました)

 

だから、バスターミナルといえども不要な電気はすぐに消されていました。(新宿のバスタと正反対と思って頂ければわかりやすいかもです)

 

だだっ広いターミナルの中で灯りが着いているのは、ごく僅か。一番明るいのがターミナルに1つだけあったコカコーラの自動販売機の灯りでした。

 

その横のベンチに腰掛け待つことにした私でしたが、午前1時を過ぎる頃にはバスターミナルには人影は全く無くなっていました。

 

そうした中、約束の午前3時までにはまだまだ時間があり、寒いこともあってターミナル周辺を一回りしてこようと動き始めました。

 

外灯など何の役にも立たないほど周りは真っ暗で、人通りどころか車も走っていません。そうした中、何周かグルグルと周回を重ね、定位置のコーラの自販機の横のベンチに腰掛けて迎えを待ちました。

 

その時ふとターミナルの1つの部屋に小さな灯りが点っているのに気づき、思い切ってその部屋の方に向かいました。鉄格子がはまってはいましたが、中の様子は見えました。どうやらバスの運転手さんなどの休憩所みたいな事務所でストーブが見えて温かそうでした。

 

「上手くすれば迎えがくるまで中で待っていたら?と言って貰える」と今から思えば非常に甘ちゃんな考えで重そうな鉄の扉の前に立ち、ノックをしました。

 

暫くすると、鉄の扉についている小さな窓(映画などで見る刑務所シーンでつかわれるパカッとひらく横に細長い小窓です)が開いて、無愛想&警戒する様子で「何か?」と言われました。ここは、超チャンス!と身振り手振りを合わせて、私は「日本人の観光客で怪しい者ではなく、まもなくしたら迎えが来るけれど外が寒いのでそれまで中に入れて欲しい」旨を伝えました。(この時点で十分不審者と警戒されていたのですが、私も必死で、気持ちは伝わるものと思い込んでいました)

 

必死で訴えているにも関わらず、話の途中でパカッと開いた小窓は無情にもバンッと閉じられてしまいました。

 

ここで諦めるわけにもいかず、リトライです。

 

ドンドンと叩いていると、もう一回窓が開きました。もう日本の旅行者作戦は通じません。そこでどうしてその言葉が出たかは覚えていないのですが、「便所を貸してくれ」と言う言葉が咄嗟にでました。

 

相手は小窓から私の様子を伺いながら、後ろの人たちに何か言っています。

 

この作戦も失敗かと諦めかけたときに、鍵を廻す音が聞こえ、チェーンが掛かった扉が少し開きました。

 

大チャンス!

 

「もう、漏れそうなんだ」と身振り手振りでアピールしていると、扉を開けてくれました。「よし!これで温かい室内に入れる。中で、俺が不審者ではないこと、日本の話などして時間を稼ごう」と考えていると・・・

 

「トイレは使わせてやるが、終わったらすぐにここを立ち去れよ!」みたいなことを言われたので、よっしゃ!あとはコミュニケーションで何とかなると考え「OK、OK、」と答えました。

 

次の瞬間、身長2m近い大男が扉から鍵をもって出てきました。

 

「へ?」と思っていると、その男の人はその扉に鍵を掛け、「ついてこい」という身振りでスタスタと外を歩きはじめました。仕方なく着いていくと、ある扉の前で立ち止まり鍵を開け始めました。

 

「しまった!外の便所を使えってか?」と思った時点で、電気点灯。「さあ、とっとと小便して失せろ」というオーラがその大男から発せられています。

 

時間稼ぎをしなくては!と考えながら、どうしようもないので一番奥の便器までゆっくりと歩きつつ究極のフレンドリーな態度で話しかけました。しかし、相手は無言。

 

小便をしながらも必死にコミュニケーションを取ろうと頑張りました。愛想笑いを浮かべながら日本の話をしたと思います。しかし、相手から帰ってきた言葉は、「用が済んだら、サッサと出ろ!」でした。その言葉に逆らう隙など全く無く、「わかりました」と外へ出るしかありませんでした。

 

その大男はその後、便所の電気を消して鍵を掛け、「さっさと向こうにいけ。気をつけてな」と言い残し、暖かい部屋に戻って鍵を掛けられてしまいました。

 

また一人暗くて寒いバスターミナルに逆戻りです。気温は益々下がり、冷たい風も吹いてきました。

 

「本当に迎えは来てくれるのかなあ?この場所を本当にわかってくれてるのかな」と、今まで無かった不安が頭をよぎり始めました。

 

つづく